2021/07/31 00:05


円柱型の糸魚川翡翠を使ったペンダントトップです。
糸魚川翡翠の業者さんが手磨きで研磨していたものを、色と形がなんとも可愛らしくてついついまとめ買いしてしまったルースを使用しております。
石屋さんが変わった形面白い形に研磨されるとき、基本的に、仕立てる職人の石留めのことは考えておられません。(笑)
こういう、側面がどこもまっすぐな形状は、爪で留めるのが難しいため、通常は、石に穴を開けたり、接着剤を使ったりします。
ですが私は個人的に、翡翠に穴を開けたり、接着剤を使ったり、どうしてもしたくなくて、他に方法はないかと教室の講師に相談しました。
貴金属加工のベテラン職人である教室の講師も、自分なら接着でやると困ってました(ですよね)が、裏から蓋で押さえるやり方のコインフレームを真似できないか、と提案があって、採用して仕立てたのがこちらです。
コインフレームの厚みを長くして、厚み部分から中の翡翠が見えるようにした、形になります。

作成技法は鍛造(たんぞう)といいまして、金属を切ったり削ったり潰したりと直接加工して部品を作り、部品の繋ぎ目にロウと呼ばれる低融点合金を溶かして繋げて(ロウ付け)おります。

こちらの翡翠ルースは研磨専門職人ではない石屋さんの手磨きによる研磨なので、単純な寸法の個体差以外にも、実は、円柱がきっちりしておらず、側面が窄まってたり膨らんでたり、上下が平らでなく歪んでたり、しているため、一つ一つの形状に合わせて部品を用意して組み立てるのに試行錯誤しました。
また、柱の橋渡しによる組み立ては、橋渡しの距離が長くなるほどズレが生じて形が狂いやすいので、3本をきっちり橋渡しするのにも苦労しました。

このロウ付け作業ですが、金やプラチナと比べて銀は熱伝導率が高いため、銀では1箇所を加熱すると別の部分にも熱がすぐ伝わってしまうので、こちらをロウ付けしているとその前にロウ付けした場所に熱が回ってロウが溶けて外れてしまう恐れがあります。
したがいまして、銀で複数箇所をロウ付けする場合は融点の異なるロウを融点の高いほうから順番に使う必要があります。
その際にも、熱の伝わりを考えて、その前にロウ付けした場所が高温にならないよう、ロウ付けする順番や、火を当てる向きや、火を当てたい場所の位置について、計画を立てて作業を行う必要があります。
さらには、銀は金やプラチナに比べて熱膨張率も高いため、火に当てる作業を何度も繰り返していると膨張と収縮の繰り返しで、せっかく作った形があとから歪む心配も…
実は、銀の鍛造は、金やプラチナの鍛造よりも、手間がかかってるんですね。
銀は金やプラチナと比べて材料費がお安いので通常は工賃をあまり多く頂戴しませんが、本当はより多くの手間がかかっていること、知っていただけますと幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。