2021/07/31 12:12

銀粘土でセキセイインコの形の胎(七宝焼の枠)を作りました。
2021年7月20日〜7月25日 福岡市美術館 市民ギャラリーA「ジュエリーのこれから」展2021出品作品。
作品展テーマ「和」に対する「和み、和気藹々」として作成いたしました。

モデルは、ジュエリー教室のアイドル、セキセイインコのきーちゃん(本名きずな、オス)です。
諸般の事情により、教室代表の先生が引き取って教室で毎日世話をしながら飼ってます。
しばらく前までの特技は止まり木前転でしたが、最近は、鳥籠壁面パルクール飛びつきが増えました。
金属加工を含めたジュエリー教室ですので、糸鋸の音、ヤスリの音、木槌や金槌の音、ガスバーナーの音、超音波洗浄機の動作音、はてはコンプレッサーの音と、作業に伴い様々な騒音があるのですが、きーちゃんは騒音には全く平気で、むしろ作業音に対抗して「俺の話を聞け!」とばかりににぎやかに鳴いてます。
受講生の性別を問わず吐き戻しの求愛をしてくる自由なきーちゃんですが、人間に触られるのだけは苦手で、換羽期の筆毛がツンツン飛び出てて痒がってる頭を掻いてあげたくても、触らせてくれずに逃げるのが少し残念です。

彫金七宝は、金属を彫ることで胎を作る手法です。透明釉薬を用いて彫り跡を生かすと毛の流れなど質感を表現できます。
こちらは、粘土タイプの銀粘土で板状の大まかな形を作ったあと、ヤスリて整え、模様や釉薬を焼き付ける窪みを彫って胎を作り、焼成してから、釉薬を乗せて電気炉で焼き付けました。乗せた釉薬が融けると隙間が埋まってかさが減るので、減った分を追加しては電気炉に入れることを何度か繰り返し、おおよそ胎の縁と同じ高さまで釉薬が埋まるまで焼き付けます。

透胎七宝は、底のない透かし状態の胎に、七宝釉薬を膜状に焼き付ける手法です。透明釉薬を用いると光が透けてステンドグラスのような仕上がりになります。
こちらは、シリンジ入りペーストタイプの銀粘土を何層も線状に積み重ねることで、透かし状態の胎を作り、焼成してから、底のない枠の中に釉薬を詰めて、落ちないうちに電気炉に入れ、炉内で溶けた釉薬の表面張力で膜状に焼き付けました。釉薬が溶けてかさが減ったり、溶けた釉薬が表面張力で偏って集まったり、逆に溶けた釉薬が重力に負けて落ちたり、するため、一度の焼き付けでは膜が埋まらず穴が開くので、穴を塞ぐように釉薬を詰め直しては電気炉に入れ、を、穴が塞がるまで繰り返します。逆に、釉薬が偏って厚くなりすぎた部分は、砥石で削ってから、表面を滑らかにするためにもう1度電気炉に入れます。それを最低でも、枠の数、色の数、繰り返すことになります。また、後から焼き付ける釉薬に対応していると、前に焼き付けた釉薬に穴が開いたり偏って厚くなったり、といったこともよくあるので、前の釉薬に戻って対応することもあります。従って、彫金七宝と比べて釉薬焼き付けの手間が数倍かかります。

実はこちらの2点、脚以外は使用釉薬の配置が同じです。底があるのとないのとで、発色がかなり違って見えますね。
釉薬によっては、釉薬の色の成分である金属が、電気炉内で焼き付け中に粒子径が変わったり、銀との接触面で銀と反応したりして、色が変わります。赤〜ピンクの釉薬と、花白(半透明白)は、釉薬の性質上、銀との接触面でどうしても色そのものが変化しやすいです。釉薬の色の変化そのもの以外でも、底のあるなしで光が底で反射するか裏側に透けるかによる影響、釉薬の厚みなど、発色の見た目の違いに影響のある要素が重なって、これだけの違いになっております。

どうぞよろしくお願いいたします。