2023/01/31 18:02
インターネットを一般の人が広く利用し始めたのは、Windows95が発売されて以降、私が大学生の頃からでした。そこから、ネットワーク上のさまざまなサービスが普及していきました。弊ショップがオンラインでお客様に商品をご提供できるのも、インターネットのおかげです。
個人が容易に情報を発信できるSNSサービスも、インターネットの代表的な利用法の一つです。新しく便利な技術は、同時に、新しい危険性も伴います。
SNSでは、他の利用者にも見られる投稿を介してのやりとりだけでなく、しばしば、特定の利用者同士のみでやりとりするダイレクトメッセージ(DM)が利用されます。このDMですが、さまざまな人との交流に便利な反面、詐欺や詐欺まがいへの悪用も知られています。
よくあるのが、「こんなに儲かる副業しませんか」「アンバサダーになりませんか」「モデルやりませんか」といったものです。こういう誘いかけは、相手構わず無作為大量に送りつけるもので、文面の内容が受取手に当てはまらないこともよくあります。当然、明らかに怪しいものは拒絶されますし、各SNS運営ではそういった、相手構わず無作為大量なメッセージや、虚偽の内容のメッセージに対して、通報や利用制限などの仕組みを設けるなどの対策をしています。詐欺師側もそういった運営側の対策の隙をつく形であの手この手でやってくるので、いたちごっこの状態です。
詐欺だけでなく、嘘ではないけれど信用できない不誠実なやりとり、というものもあります。
ジュエリーショップとしてSNSで情報発信している中で、さまざまな怪しいDMを受け取ることがあります。
これは、日常の中に舞い込んだ、ちょっとだけ非日常ないくつかの出来事の顛末です。
《荷が重すぎる》
ある日、知らない人からDMが届きました。
「ドバイの翡翠専門店のアンバサダーになりませんか?」
間違いなく詐欺だと思うのですが、詐欺以前に、ドバイの上に翡翠って設定、荷が重すぎて無理です。
《ペットの投稿したことない》
ある日、知らない人からDMが届きました。
「あなたの肉球のある相方さん(飼い犬または飼い猫)可愛いですね。弊社の犬猫用ペット服のモデルやりませんか?」
あの、私、犬猫飼ったことないどころか、よそのコや野良を含めてこのアカウントで犬猫の投稿1回もやったことないんですが?
《客層が違う》
ある日、知らない人からDMが届きました。
「雑誌広告記事の代理店担当者です。あなたの投稿とショップを見させていただきました。是非、〇〇という雑誌に広告を出しませんか?」
ちなみにその〇〇という雑誌、弊ショップの想定しているお客様の年齢層と、読者の年齢層が、全く違います。本当に投稿とショップを確認したのでしょうか。ただし、さすが雑誌広告記事の代理店を名乗るだけあって、広告費のプランは最初から提示してきたところは誠実でしたね。まあでも、とうてい売上で回収できない金額なので、無理です。
《ビジネスの話が通じない》
ある日、知らない人からDMが届きました。
「あなたの商品気に入った。コラボしない?」
あなた誰?と思って相手のアカウントを確認して、なんだか外国のモデルさんぽいけど知らないなあ(店主は流行りのファッションに極めて疎いです)、と検索したところ、どうやら多くのハイブランドのモデルをやってる人のようでした。たぶんオシャレに敏感な人でしたら、ハイブランドのモデルにびっくりするのでしょう。店主はとにかく、宝石やジュエリーやデザインは好きでも、流行りやハイブランドといったものにはあまり頓着しないので、ふーんそうなんだー、くらいの熱量でした。
まあでも、相手が誰であれ、弊ショップの商品を気に入っていただけるのは純粋に嬉しいです。では、コラボするとはどういうことなのか、返事をしてみることにしました。
「着画を撮影するよ。撮影の後は◎◎(世界的超ハイブランド)のショーに着けていくよ。」
なるほど。では、そのショーというのはいつなのでしょうか。先方まで商品を送るには、2週間ほどかかります。ショーの日付から撮影日を逆算して発送日を逆算しないといけません。それに、弊ショップの商品はジュエリーですから、服とのコーディネートがあったり、サイズがあったり、ピアス穴の有無だってあります。状況次第では現品ではなく新規お仕立ても必要になります。なんでもいいから送ればいい、というわけにはいきません。また、こちらの支払いはどうなるのかや、送った商品は使用後に返却なのか買取なのか無償提供なのかも。そのあたりを確認しようとしました。
「だから、着画を撮影して、撮影の後は◎◎のショーに着けていくよ。」
何度、表現を変えて質問しても、本人の提案の概要だけが返ってくるばかりで、具体的な日程も、こちらの準備に必要な情報も、全くわかりません。あれ?外国って日本よりも契約事に対してとても細かく決めるんじゃなかったっけ?あれ?
あ、この人だめだ。実在するか本物か偽物か乗っ取りか以前に、ビジネスの話ができない人だ、と。
これでハイブランドのモデルさんってよくやれてるなあ。ひょっとして、普段はマネージャーがしっかりしてて、ご本人は残念な人なんだろうか、と。
なので、丁重にお断りしました。惜しいな、という気持ちは正直ありましたが、ビジネスの話ができない人とお取引する余裕はありません。
その後、同じようにコラボを持ちかけられた同業仲間と情報交換して、以下のことが判明しました。
・実在するハイブランドモデルご本人のアカウントである。
・日本人のブランド相手に副業としてコラボを持ちかけている。
・実際に格好いい着画を撮影してくれることは間違いない。
・ただ、契約内容がいい加減で、こちらの指定に沿わなかったり、後出しジャンケンで費用を追加請求したりするなど、やり方が不誠実で信用できない。
・人によってはハイブランドではなく世界的ファッション雑誌の名前を出してくる。
・ちなみに、◎◎のようなハイブランドのショーに招待された場合、上から下まで全身そこのブランドで固めるのが業界の決まり事なので、◎◎のショーに他のブランドのものを本当に着けていくようなモデルはそのうち干される。(なので、ショーに着けていく、はおそらく嘘)
お国柄なのか、日本人相手だからなのか、ご本人個人の問題なのか。
あなたのその、不誠実で信頼を損ねるやり方、ご本業に影響がないことを祈ってます。
いやはや、世の中にはいろんな人がいますね。皆様もどうかくれぐれも御用心ください。