2023/03/02 19:47

メレ石枠対応デザインリング「玉鬘(たまかずら)」、販売開始いたしました。
こちらは、弊店これまでのデザインリングの中で、現在一番細身の華奢なデザインです。ですが、最近の地金相場の高騰化でとにかく細いリングとは違い、見た目に影響の少ない箇所に地金の厚みをしっかり残すことで、適度な着け心地と、簡単には変形しない耐久性を、確保しています。そこは、たとえ細身リングであっても、ある程度のボリュームは確保したい、店主の好みが出ています。
地金のみのデザインリングとしてお楽しみいただけるのはもちろんのこと、小さなサイズの各種ルースの石枠留めセミオーダーも可能です。

デザイン名の「玉鬘(たまかずら)」とは、古代の装飾品のひとつで、多くの玉を糸に通した髪飾り、のことです。
髪飾りの糸のような、髪の毛のような、植物の蔓(つる)のような、細い一本の線を、指の周りにふわりと2周半巻きつけて、両端をくるりと巻いたような、形状です。そこに、小さなルースを石枠であしらうと、まさしく、玉鬘のように、宝石を糸に通したようになります。

正面の3本並んだ部分には、隙間があって抜け感があり、実際の地金量よりも軽やかな印象を与えます。この抜け感が、このデザインでどうしてもやりたかったことです。一本線のリングでしたら一番細身に仕上がりますが、デザインとして寂しいです。二本線、三本線と重ねることで、デザインに表情が増えますが、くっつけて重ねてしまうと、一体化された幅が広くなり見た目が重たくなってしまい、細身デザインにした意味が半減します。そこに、隙間を開けることで、同じ地金量でも、一本一本が独立することになり、デザインの表情と見た目の軽やかさを両立させることができます。
ただし、作る側の視点ですと、正直、この位置にこの形状の隙間があるデザインは、ゴム型にインジェクションワックスを流し込んで取り出す際や、鋳造上がりで仕上げ磨きをする際に、作業がしづらくて手間がかかるのです。原型を作っているときに、通っている教室の講師(現役ベテラン職人)からも「これは仕上げが磨きにくそう」という冷静なツッコミをもらいました。ですよねー。わかってはいても、それでも、どうしてもこの形にしたかったのです。そして店主は、自分でインジェクションワックスを取り出し、自分で仕上げ磨きをしますので、自分のデザインの手間は自分で責任を取るのです。

この「玉鬘」、参考として、石枠取り付け加工のお仕立て例もご用意しています。
そのうち、今現在で石留めまで完了しているのが、《花笑み(はなえみ)》」と名付けた石留めお仕立て例です。こちらは先日開催されました、「ジュエリーのこれから」展2023福岡市美術館で、実物をお披露目いたしました。3mmのクリソベリルと、2.5mmのピンクスピネルを、上下の線の巻き終わりに対角に配置しております。パロットカラーとまではいかないまでも十分鮮やかなクリソベリルの黄緑色。クリソベリルの色調と釣り合いをとるために、あえて選んだ、ホットピンクではなく柔らかなスピネルのピンク色。その二つが並ぶことで、いかにも春らしい色合いに仕上がりました。
花が咲く、ことを、花が笑う、ともいいます。春の日差しに、新芽が伸び、花が笑うように咲く、そんな意味を込めた、お仕立て例の名前です。

そして、《花笑み》の出来に気を良くして、気の早いことに別の石枠取り付け加工のお仕立て例も、鋳造まで出来上がっております。こちらは、合計4石を並べる、少々贅沢で思い切ったお仕立て例です。さて、今度のこちらにはどんな石を使いましょうか。楽しく悩んでます。

そんなこんなで、どうぞよろしくお願いいたします。